キツネばかりが悪いわけじゃない-「キツネ」

 日本では人を化かすと言われ、英語では狡い事をcrafty as a foxという慣用句が有るそうでキツネは和洋問わず何故か悪者にされがち。
 単独で行動ですることや顔つきのせいでしょうか?
なんだか不憫。

 

 今回ご紹介する、文M・ワイルド、絵R・ブルックス「キツネ」でも一見するとキツネはネガティブに描かれていますが、よくよく読むとそうでもないのがこの絵本のポイント。

 

 あらすじは火傷を負って飛べなくなったカササギと片目の見えないイヌがお互いのハンデを補いながら仲良く暮らしているところにキツネが現れ、カササギをそそのかしてイヌから引き離すというお話。

 あらすじからだとやっぱりキツネが悪者のようですが、カササギ、イヌ、キツネがそれぞれに特異な性格が設定されていて、一概にキツネが悪いとは言えない構造になっています。

 

 イヌは心優しいが単純で騙されやすい。
 カササギはそこそこ賢いが、利にさとく腰が座っていない所がある。
 キツネは一人で生き抜く強さを持ち、イヌ達とは違い身体的なハンディも負ってはいないが、嫉妬深くプライドが高い為、他者と親密な関係が築けない。

 また、イヌはキツネに対してフレンドリーに接しますが、カササギはキツネを信用ならないと警戒します。
 このような態度がキツネを嫉妬を抱かせたきらいもあります。
一方、カササギはキツネは信用ならないとイヌに忠告していながら、ついついキツネの口車に乗ってしまう。

 つまりこの動物達は我々人間が持つ嫉妬や猜疑心、欲望を持っていて、どの動物が特に悪いという話ではないのです。
 自分の不幸の身を歎き、あっさり欲望に負けてキツネに騙されてしまうカササギが一番人間らしいというか、自分に近いものを感じた一方でキツネの孤独と嫉妬混ぜこぜにしながらも独立独歩で生きているスタイルに惹かれる部分も有り(モチロン、他人を陥れるのは感心しませんが)、そこは作者も同じで、だからこそタイトルが「イヌ」「カササギ」ではなく「キツネ」なのでしょうし、一番魅惑的な容姿に描いたのでしょう。

 

 ラストシーン、キツネによって住み処から遠く離れた灼熱の砂漠に置き去りにされてしまうカササギは、このままここで死んでしまっていいとも考えてますが、自分を待っていてくれるイヌの姿を思い浮かべ奮起して歩みはじめます。(羽を怪我しているので飛べないのです)

 物語はここで終わりを迎えます。
 無事に着いたとも着かなかったとも書かれていません。
また二人で仲良く暮らしたかもしれませんし、力尽きてんでしまってかもしれません。
 仮に辿り着いてもイヌは待っていないケースも有り得るし、案外道中で居心地の良い場所を見つけて住み着いてしまうかも。
カササギならやりかねません。自己正当化は得意そうです(笑)

 しかし諦めずにまず一歩踏み出したのは事実ですし、それで今の時点では充分なのでしょう。
先の事は誰にも分かりませんから。

 ストーリーについてばかり触れてしまいましたが、絵、フォント、テキストの配置にも力を入れて作品でご興味の沸いた形はお手に取ることをおススメ致します!

 

キツネ

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